雇用

障害者採用の進め方|募集チャネル・選考・面接での配慮まで実務ガイド

障害者採用を「計画→職務設計→募集→選考→受け入れ」の6ステップで解説。募集チャネルの比較表、面接で確認すべきこと・避けるべき質問、実習の活用まで、定着につながる採用の実務をまとめました。

障害者採用は、採用計画から職務設計・募集・選考・受け入れ準備までを一連で設計すると、入社後の定着につながります。

この記事のポイント

  • 採用活動の前に「何人・どんな職務で」を決める採用計画と職務設計が成否を分ける
  • 募集チャネルは特徴が大きく異なる。自社の状況に合わせて組み合わせる
  • 面接では配慮事項の確認が中心。障害そのものを詮索する質問は避ける
  • 実習・職場見学を挟むとミスマッチが減り、双方が安心して入社日を迎えられる

障害者採用の全体像(6ステップ)

  1. 採用計画 — 法定雇用数から必要人数を確認し、時期と体制を決める
  2. 職務設計 — 任せる業務を切り出し、職務内容を言語化する
  3. 募集 — 自社に合うチャネルで求人を出す
  4. 選考・面接 — 能力・適性と、必要な配慮を確認する
  5. 実習・職場見学 — 実際の業務と職場で相互確認する(推奨)
  6. 受け入れ準備・入社 — 配属先の理解づくりと環境整備をして迎える

全体の背景となる制度や定着までの流れは障害者雇用の進め方 完全ガイドをご覧ください。

ステップ1: 採用計画 — まず必要数を確認する

法定雇用率は2026年7月1日から2.7%(対象は常用37.5人以上)です。自社の必要数と不足数は雇用率シミュレータ(無料)で概算できます。そのうえで「いつまでに・何人・どの部署で」を決めます。期限直前の駆け込み採用は、受け入れ準備が間に合わずミスマッチの原因になりがちです。準備から入社まで3〜6か月を目安に逆算するのが現実的です。

ステップ2: 職務設計 — 「任せる仕事」を先につくる

「採用してから仕事を考える」と定着しません。各部署の業務を棚卸しし、切り出せる業務を組み合わせて職務をつくります。具体的な方法は業務切り出し完全ガイドで部署別に解説しています。

ステップ3: 募集 — チャネルの特徴を知って選ぶ

障害者採用の主な募集チャネル比較
チャネル 費用の目安 特徴 向いているケース
ハローワーク(障害者求人) 無料 基本の窓口。専門援助部門があり、支援機関との連携も取りやすい すべての企業。まず登録
人材紹介サービス 成果報酬(入社時) 要件に合う候補者の紹介。スピードが出やすい 採用要件が明確・期限がある
特別支援学校 無料 新卒採用。実習からの採用が一般的で、学校のフォローがある 長期育成前提の定期採用
就労移行支援事業所 無料 訓練を経た方の実習→採用。事業所の定着支援が入社後も続く 初めての受け入れで伴走がほしい
合同面接会 無料〜 多くの求職者と直接会える。自治体・ハローワーク主催が中心 母集団を広げたい

求人票では、職務内容・勤務条件に加えて「配慮できること(通院への配慮、在宅勤務の可否など)」を具体的に書くと応募につながりやすくなります。在宅前提の採用は在宅・テレワーク雇用ガイドも参考にしてください。

求人票の書き方のコツ

  • 業務は動詞で具体的に — 「事務補助」ではなく「請求書データの入力・チェック、郵便物の仕分け」のように書く
  • 1日の流れを載せる — 出社から退社までのタイムラインがあると、働くイメージが持てて応募の心理的ハードルが下がる
  • 配慮できることを明記 — 通院配慮・時差出勤・在宅可否・静かな執務環境など、対応可能なものを具体的に
  • 選考プロセスを開示 — 面接回数・実習の有無・支援者同席の可否を先に示す

ステップ4: 選考・面接 — 確認すべきことと避けるべきこと

面接の目的は、職務への適性と、力を発揮するために必要な配慮を確認することです。障害そのものを詮索する場ではありません。

面接で確認すべきこと・避けるべき質問
確認すべきこと(職務関連) 避けるべき質問(適性と無関係)
応募職務の経験・スキル、できる業務の範囲 障害の原因や経緯の詮索
働くうえで必要な配慮(通院頻度、勤務時間、環境) 家族構成・出生地など職務と無関係な事項
体調のセルフマネジメント方法(差し支えない範囲で) 「治るのか」といった医学的判断を求める質問
緊急時・体調不良時の連絡先や対応の希望 手帳の等級だけで能力を推し量ること

本人が希望する場合は、支援機関の担当者に同席してもらうと、配慮事項を具体的に確認できます。募集・採用段階での合理的配慮(面接時間の調整、筆談・支援ツールの許可など)は法律上求められる対応です。

ステップ5: 実習・職場見学を挟む

書類と面接だけでは、実際の業務との相性は分かりません。1日〜2週間程度の職場実習や見学を挟むと、本人は仕事内容と職場の雰囲気を、企業は業務遂行の様子と必要な配慮を、入社前に確認できます。ハローワークや支援機関経由の実習は、保険や手続きの面でも仕組みが整っています。実習中の様子は、配属予定の現場社員にも見てもらうと、受け入れ側の不安の解消にもつながります。

ステップ6: 受け入れ準備 — 配属先の理解が定着を左右する

内定から入社までに、配属先への説明・業務手順書の準備・環境整備を進めます。準備の具体的なチェックリストは受け入れ準備ガイドを、入社後の定着支援は定着支援ガイドをご覧ください。

精神・発達障害のある方の採用が中心になっている

近年の障害者採用市場では、新規求職者に占める精神障害・発達障害のある方の割合が高まっており、採用実務もそれを前提に設計する必要があります。ポイントは3つです。

  • 体調の波を前提にした設計 — 週20時間以上30時間未満の短時間勤務(0.5カウント)や週10〜20時間の特例(精神障害者等・0.5カウント)を使い、フルタイム前提を外して間口を広げる
  • 「できること」ベースの面接 — 診断名から業務適性は判断できません。得意な作業・集中しやすい環境・ストレスサインを具体的に聞く
  • 定着支援を採用時から組み込む — 支援機関との連携体制や定期面談を入社前に設計しておく。精神障害のある社員の定着支援ガイドに実務をまとめています

よくある失敗と対処

障害者採用でよくある失敗パターンと対処
失敗パターン 起きること 対処
期限直前の駆け込み採用 受け入れ準備が間に合わず早期離職 3〜6か月の逆算スケジュールで計画する
職務を決めずに募集 入社後に「任せる仕事がない」状態に 募集前に業務の切り出しと手順書化を済ませる
面接だけで判断 業務・環境とのミスマッチが入社後に発覚 実習・職場見学を選考に組み込む
配属先に事前説明がない 現場が戸惑い、本人が孤立する 受け入れ研修と相談ルートの明確化を先に行う

よくある質問

採用までどのくらいかかりますか?
職務設計や受け入れ準備を含めると、おおむね3〜6か月が一般的な目安です。準備に時間をかけるほど入社後の定着は安定しやすくなります。
求人を出しても応募が来ません。
職務内容が抽象的、配慮事項の記載がない、勤務条件が硬直的、といった求人は敬遠されがちです。業務を具体的に書き、「配慮できること」を明記し、時短や在宅の選択肢を検討してみてください。チャネルの追加(人材紹介・実習経由)も有効です。
面接で障害について聞いてもよいのでしょうか?
職務遂行と配慮の確認に必要な範囲であれば問題ありません。「業務を行ううえで配慮が必要なことはありますか」という聞き方が基本です。原因や経緯の詮索は避けます。
採用選考で適性検査を使えますか?
使えますが、障害特性により本来の力を測れない場合があります。時間延長や実施方法の調整(合理的配慮)を本人と相談してください。
雇用形態は正社員でないとだめですか?
法律上の制限はありません。週20時間以上の常用雇用であれば雇用率に算定されます(週10〜20時間の特例もあります)。段階的にステップアップする設計も広く行われています。
支援機関との連携は必須ですか?
義務ではありませんが、初めての採用では強く推奨されます。就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターが入ると、本人の特性情報の引き継ぎ、入社後のフォロー、体調変化時の相談先が確保でき、企業側の負担も下がります。
初めての採用で不安です。どこに相談すればよいですか?
ハローワークの専門援助部門、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターが公的な相談先です。当サイトの無料相談でも、進め方を中立の立場でご案内しています。

本記事は障害者雇用促進法・厚生労働省の公表資料にもとづく一般的な解説です。数値・制度は2026年7月時点。出典: 厚生労働省「障害者雇用対策」「障害者差別禁止指針・合理的配慮指針」。最終更新: 2026年7月。